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サヤエンドウと昇降口




プラスチックやビニールを思い出させるほどに、ムラのないキミドリに、砂粒が塗されている。

逸美は上から2段目にある下駄箱から靴を出して、それを普段より高い位置から地面に落とした。ぱた。
すると、真っ直ぐ落ちた靴の横に、明るいサヤエンドウの転がりを確認したのだった。
すこし汚れているけどいい色。

今日の給食。ワカサギの唐揚げ。ご飯。なぜか春雨の入った味噌汁。ほうれん草と油揚げのなにか。牛乳。
サヤエンドウは無し。
昨日の給食。えええと。まず牛乳。牛乳。ぎゅうにゅう…と…。あ!カレーライスだ。
サヤエンドウは無し。
おととい?
おとといの給食。逸美は昇降口で首をひねる。まわりは静か。校庭にも誰もいない。
風がうすく低く吹いて、地面がカラカラと剥がれている。高い鉄棒が少しあっちい、5月のあたま。
まだ正午すぎで、青空で、今日のカバンは軽いのに、だれも居ない。もう帰っちゃうよ。

「おととい。」

逸美は、靴を地面に落としたときの手の形のまま、少し猫背で首をひねり、口だけ動かしてそうつぶやいた。
おとといの給食は難しい。がらんと昇降口。校庭からそのままの風、逸美のスカート吹きすさぶ。

「おとといは水曜日である。」

逸美はまた、口だけを動かしてつぶやいた。ナゼ、サヤエンドウがココに。これは謎だ。謎であるよ、しかしね、
おとといの献立を思い出せないということはまだ、完全な謎ではないんだ。「カノウセイをヒメタ」、謎なのであるよ。

そろそろ首が痛い。逸美はまだ首をひねっていた。おとといの献立を考えているのだから、しょうがないじゃない。

誰かが来たら、言い訳しよう。たぶん、こうした姿勢で止まってるアタシについて、誰かがこう言う。「どうしたの」。
男子ならこうかな。「時が止まってるヤツがいるー」。ふふ。ちがうよ、おとといの献立が思い出せなくてね。

「おとといの献立!」

彼女や彼の驚いた顔!ふふ。「なぜおとといの献立を思い出しているの」それはだね、ここにだね、
ほら。緑緑しいサヤエンドウが落ちているからだよ。
でも、今日の給食はあれでしょ、ワカサギとか。サヤエンドウは、無かった。そしてですね、昨日。
昨日はカレーなんだよ。サヤエンドウないでしょ。でもこのサヤエンドウは、まだ新しいでしょう!

「だから。」

だからこのかっこうなの。逸美はまたひとりつぶやく。三文字と存在の証明。
ああうあ、誰か来ないのかな。



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[ 2010/04/30 13:30 ] 未分類 | TB(0) | コメント(-)

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